仕事帰り。 灰色になった身体。 街灯に集まる蛾の群れ。 その光は伪りだ。 そこに救いはない。 ヘッドホンからは気だるい音楽。 曲の名前はわからない。 ただ ピンク・フロイドを思わせるような浮游感。 ふと 见上げると 大きな満月。 私と月を结ぶ黄色い糸。 ひどく頼りない糸。 しかし 私の唯一の生命线。 「结ばれている」 その感覚を胸に 地下鉄へと吸い込まれていく。   ある雨の日。 私は终电に乗るために走っていた。 月は出ていなかった。 糸がもつれて転んでしまった。 容赦なく降り注ぐ雨。 この世界は伪りだ。 ここに救いはない。   水たまりで窒息しかけたその时 あなたが现れた。 あなたが谁かはわからない。 ただ 圣母マリアを思わせるような安心感。 あなたは私のために 黄色い気球を打ち上げてくれた。 私は草原の真ん中で 気球を眺めていた。   その光も この世界も 伪りだ。 ただ 伪りでもいい。 伪りでもいいから 生きていこう。   黄色い糸を握り缔めながら 私はそう思うことができた。